前向きニュース (2024年8月27日)


成長と経験

ソウタの内野ゴロが際どいところでセーフとなり、歓声があがる中、
「ホームだ!」
と叫ぶ相手ベンチの声につられて目を転じる。
セカンドから走り込んできたコウタロウが本塁にスライディングしていた。
一瞬の静寂
「セーフ!」主審が大きく手を広げた。
さっきよりも大きな歓声があがる
2点勝ち越し。
よし、勝つぞ!
とまた気合いが入りつつ、
コウタロウがこんなプレーをするとは、
と感激して涙目になってしまった自分に気づいた。

コウタロウがシンタと一緒に入って来たとき、投げ方も捕り方もまったくメチャクチャで、一体どうやって教えようかと悩んだ。

この前野リーグの最初に出た試合で、四球を選んで一塁ランナーとなったコウタロウは、満塁なのに盗塁を試みて、皆がパニックになった末にアウトになって負けた。
「ちゃんとルールとか覚えないとね」と整列しながら審判に言われたことは忘れられない。

あれから3年、その前の回の守りでダイビングキャッチを試みた姿も合わせて、ちゃんと考えて、身体も動くようになって、チームのムードメーカーとして、欠かせない存在になっている。

「もっと前に立って構えろ」と言われて、打席の前の方に出ていくシュンがいる。
入ったばかりの頃、ボールが怖くて、打席にすら入れなくて、デッドボールで泣いていたシュンが、堂々とした構えで相手を威圧するように打席に立っている。
最近は、ショートバウンドも捕れるようになってきたし、守備交代でも走って帰ってくる。
苦手だったこと、出来なかったことを1つ1つ克服して、頼れる4番バッターへとなってきている。

先発マウンドに立つケイタが大きく見えた。
バッターボックスでも同様に大きく見えた。
実際背が伸びたんだろうと思うけど、以前のように遠慮したような、チカラを出し惜しんでいるような様子が無くなって来たと思う。
チームに入って来たとき低学年なのに身のこなしや投げ方など、センスを感じたし、上級生からも可愛がられて、のびのびやっていた。
上級生になるにつれ、チカラを出しきれない感じがしていた。
ここのところ、その遠慮の殻を破れたように思えるから大きく見えたのだろう。
点は取られたけど、ナイスピッチング、
アウトにならなかったけど、いい牽制だった。

マウンド上でユウスケが微笑む。
前の回に同点に追いつき、こちらの流れになって来たところでピッチャーを託され、嬉しそうにマウンドで、深呼吸していた。
こういう表情のときのユウスケは頼もしい。
しっかり抑えてくれて、次の回の勝ち越しにつなげた。

セカンドへのライナーをハユが捕った。
ワンバウンドになりそうな当たりに腕を前に伸ばして地面スレスレで。
あの手の当たりをつい下がってしまい、難しいバウンドにして取り損ねる姿を何度も見て来たが、この打球には身体が前に出ていた。
オール板橋に選ばれて参加しているハユは、違う環境で色々なことを学んでいるようだ。
学んだことのいくつかを嬉しそうに話してくれたことがあった。
外でも学んで、積極的にプレーするようになれば、ますます頼りになる。

「前に突っ込むなよ」
打席に向かうサクラにお父さんが声をかける。
その声に「はい!」としっかり返事をしていた。
以前は、無言であるか、「は〜い」という気の入らないような返事だったのに、今日はお父さんの目を見て、気持ちが引き締まるいい返事だった。
こういう返事ができるのは、言われたことの意味をちゃんと理解できたからだ。
考えて打席に立てるようになってきた。
結果四球であったが、こういうキリッとした返事はチームを引き締めてくれる。

ソウタのキャッチャーはバランスがいい。チームが締まる。
野球はセンターラインが大事だとはいうが、少年野球はキャッチャーの重要性が高い。
盗塁を刺すことは出来なかったが、相手が盗塁を躊躇するようなプレッシャーはかけられていた。
いつの時代もチームはキャプテンの影響を受ける。
このチームが考えてプレーできるようになってきたのは、ソウタの成長ともリンクする。

タツキが左打席に立った姿もまた大きく見えた。
いつまでも小さいような印象だったけど、脚を大きく開いて、バットを上段に構える姿は、なかなか迫力がある。
思い切り引っ張った打球はファールにはなったけど、いい当たりだった。
大きくなって、力もついてきた。

エイトが先発メンバーとしてセンターを守っていた。
遅刻が多く、先発メンバー起用を躊躇させられることもあったけど、だいぶちゃんと来れるようになってきたのだろう。
セカンドへの牽制球が逸れたのをカバーしきれなかったが、状況によってなにをしなくてはならないかはわかってきた。
久しぶりにキャッチボールしたら、コントロールが良くなっていることに驚いた。
いい球を投げるようになってきた。

追加点のチャンスで起用されたのは代打コウキ。
見逃しの三振が多かったが、最近は積極的にバットを振れるようになってきた。
このチャンスにベンチが期待して送り出したこと自体、随分変わってきた証拠。
2ストライク目を思い切り打ちに行ったスイングは空振りだったけどいい振りだった。


残念ながら試合には負けた。
勝ちに行った試合だから、いい試合であった、ではダメ。
勝たなきゃ。

よく、勝負を分けるのは勝ちたい気持ちの差だとかいうが、そうだろうか?
勝負だから誰もが勝ちたいとは思っている。
この差は「勝てる」と思っているかどうか、その経験からの自信が差になったと思う。
「勝ちたい」ではなく、「勝てる」
勝ち慣れていない我々のチームは、「勝てる」と思い切れていないのではないか。
そこを突かれたように感じる。

試合の最後のプレー。
レフトからの返球を中継で繋いで、本塁で間一髪アウトにした。
その前にサヨナラ負けだったので記録に残らないプレーだったけど、いいプレーだった。
練習してきたことがちゃんとできて、タッチしたコウタロウが高々とミットを上げる姿はカッコよかった。
こんなプレーもできるようになった。

みんな成長している。
動き方もわかってきたし、次何をすべきかも、ここでどういう気持ちになればいいかもわかってきた。
もう勝てるチームになっているから、あとは、最後まで自信を持ってやろう。
6年生はフリーズでの野球もあと僅かだ。
残り全部勝とう!勝てるから。

池谷