前向きニュース (2012年10月21日)


『試合満足度』

「顧客満足とは、期待値に対する充足度である」
-J.D.PowerⅢ世ー


夕暮れになり日没が近づいた最終回、先頭のシュウが打った一塁方向へのいい当たりのファールを見たとき、これでシュウは三振するなと僕は思った。

その予想に反して、シュウがセンター前にクリーンヒットを打ったとき、驚きと共に感動が身体を熱くした。

前の回に4点とられて6対1、敗色濃厚な中でシュウのこの一打はこの試合を象徴していた。

初回に1点とったあと、相手がショウの球を打ちあぐねる中放った三遊間のゴロ。
サードのシバがボールに触ってはじいた後ろにショートのヒッシーがいた。

そのボールをヒッシーがうまく捕って送球動作に入ったとき、僕は「暴投するなよ」と心の中で願った。
そんな心配をよそにヒッシーが落ち着いて投げたそのボールは、キレイなワンバウンドで一塁リュウセイのグローブへと収まった。

「いいぞ!ヒッシー」思わず大声で歓声を上げた。

4回裏、レフトへのフライをユウスケは目測を誤って反らしてしまった。

その直後、再びユウスケの前に打球が飛んだとき、また後ろに反らすんじゃないかと僕はドキドキした。
しかし、打球をかっこよくシングルキャッチしたユウスケが投げたバックホームの送球は、ダイレクトにキャッチャーのミットに収まり、タッチアウト。

「かっこいい!!!」そこにいたコーチ達はみんな興奮した。

試合結果は6対2。
1安打、10三振、7エラーという数字だけ見ると、如何にも負け試合だけれど、内容は違った。

ショウはすっかりピッチャ-らしくなってきた。
けん制も様になっているし、ピンチになっても動せずストライクを投げている。
最終回につかまってヒットを重ねられたが、そこまでの4回、要所で三振も取りながら見事に抑えていた。

リュウセイはキャプテンらしく、引っ張っていこうという姿勢が見えた。
一番打者で2三振だったけど、積極的に振っていく姿は他のメンバーに勇気を与える。
最終回に死球をもらってチャンスを広げ、ムードを盛り上げて、もしかして逆転するんじゃないかと期待させるあたり、リュウセイらしいいいムードだ。

タイセイは内野の要のような動きをしていた。
ショートが三遊間に寄りすぎる中で、一人でこまめに動いてセカンドを守りながら、もう少しで盗塁を阻止できるんじゃないかと期待させた。

4番シバが最後に放ったセンターフライは、捕られはしたがいい当たりだった。シバが打席に立つと打つような気がして、わくわくさせられる。
三塁の難しいファールフライも捕って、体格と共に頼りになる感じが強まった。

センターにトモヤがいることで、外野が締まって見える。
センターへのフライを危なげなく捕る姿は、外野の要らしい堂々としたものだった。

ケンタが何度も牽制球を投げていた。
キャッチャーでけん制投げるのは、勇気がいるし、すぐに反応しないと出来ないことだ。
随分と周りが見えるようになったんだな、と感心した。

この大会、ここまでの2試合、四死球の多さを見て、相手の乱調に助けられて勝ったんだと思っていた。

試合開始前、相手の体格の良さと練習のときの動きを見て、これは大差で負けるんじゃないかと思っていた。

相手投手の速い球に先頭のリュウセイが三振した時、こりゃあ敵わないんじゃないかと思った。

そんな予想をすべて裏切ってくれる内容で”惜しくも”負けた。

最後の打者シバの打球が夕暮れの中、センターへと放物線を描き、相手のグローブに収まるのを見ながら、負けて悔しいけど、なんと充足感のある試合を見せてもらったのだろうと思った。

いい試合だった。
準優勝おめでとう!

次はもっと期待値高いからね、更にいい内容の試合を見せてくれよ。

池谷