前向きニュース (2011年11月6日)


『素直さの力』

4回表、1点とられて尚もランナー2人をおいたピンチで相手バッターがマサトの球を痛打。
一瞬息を呑んだ打球はライナーでファーストトモヤのグラブに収まりピンチを切り抜けた。

その時、何かデジャヴ(既視感)のようなものを感じた。

「ジャンケン勝ったらどうする?」とリョウタロウに尋ねたら、「先攻!」という答えだった。
厳しい試合になったらサドンデスもあるから後攻の方がいいかなとふと思い、「後攻にしよう。それの方が負けて先攻になっても得した気分になれるからな。」そう言うと「わかった!」と言って嬉しそうにジャンケンに向かった。
そして、
満面の笑みをたたえたリョウタロウは嬉しそうに「負けました!後攻です!」
負けても得した気分で気持ちよく試合に臨んだ。
リョウタロウはそういう素直なところが良い。

予想通り厳しい試合だった。
初回、相手のミスにも乗じて、5点取れたのはラッキーだった。
あれがなかったらどうなっていたか、代わった2番手には抑えられ、合計7三振も取られた。

1回、先頭のタイキの三振が最初だった。
しかし、振り逃げでセーフになり、盗塁して、トモヤのヒットでまた最初の得点をあげた。
タイキが出ると得点につながる。
ラッキーボーイになっている。

右手指の骨折が完治したトモヤはバッティングの調子が戻ってきた。
そこを期待した2番起用に応えてくれた。

リョウタロウもセンターエラーで出て、チャンスは続く。

前戦の口惜しさをぶつけてもらおうと再度4番を任せたハルトは力が入りすぎたのか、今日は2三振だった。
悔しくて、悔しくて、責任を感じるハルトは見た目にも落ち込んでいた。
ハルトもまた素直だから、気持ちがそのまま態度に出る。
テンション下がったまま守備についているので、タイムをとって一喝した。
一生懸命気持ちを上げようとしているのはわかったが、すぐには笑顔になれない。
試合後、そこで気持ちを盛り上げるのがお前の良さだ、と話したら、何かを感じてくれているようだった。
また、次に期待しよう。

5番ケンタが内野安打で続く。
ケンタには試合前、サード盗塁を刺してくれよ、と言った。
その期待に見事に応えて初めて盗塁を刺した。
このプレーは大きかった。

6番マサトも続いた。
マサトは相変わらずコントロールは良かったが、今日はよく打たれていた。
試合後のミーティングで本家コーチが、1週間に3回投げたら疲れるのは当然だ、と言っていたのを聞いて、そうかそりりゃ大変だったなと改めて思った。
それでも相変わらず職人らしく淡々と投げ込む姿は、愛おしくなる。

7番リュウセイは2打席目にヒットを打った。
張り切り屋のリュウセイは、2番を任せたら張り切りすぎて空回りだった。
今日は7番に下げて、気楽に行けと言ったら、期待通りに打ってくれた。

8番ケンスケ。
今日は守備が良かった。
前回言われたことを修正して、キャッチングも送球も丁寧だった。

9番にはタイセイを起用した。
守備と走塁はまだまだだが、バッティングは良くなった。
トスバッティングを見ていると、言われたことを素直に取り入れて、良いミートをしている。
練習に一生懸命取り組んでいることは他のコーチからも聞いているし、実際ずいぶんうまくなった。

そんな9人が繋いで、初回5点、2回1点、3回1点、チャンスを潰しながらも確実に点は重ねた。
そんな積み重ねが効いて7対4。
追いすがる相手をうっちゃった。

試合後のミーティング、シバに代打の準備をいつもしておくことの大事さを話したら、涙が溢れてた。
試合中コーチに素振りしてろと言われて、何でそんなに振らなきゃいけないんだと思っていた気持ちと重なって、何かを感じたんだろうなと思う。
まだ三年生だけど、いろんな期待があって厳しく言われる機会も多いけど、これまたそれを何とか自分の中で素直に聞こうとする気持ちもあって、とてもいい涙顔だ。

タカノは先発外れて悔しかったのだろう。
悔しそうな顔をしていた。
前はそんな顔はしなかった。
それだけ試合に出たい気持ちが高まってきているのだろう。
いい悔しさだ。

ユウスケは昨日の練習試合でサードを守り、アウトを1つ取った。
そのことを皆に祝福される、そんな人気者でもある。
そのことが自信になったんだろう、先発から外れたことが悔しそうだった。
3塁コーチャーをしっかりやることが大事なことだと益々わかってきている。

足が自慢のシュウに、代走もあるという話をしたら、いい目つきで頷いた。
ちゃんとルールを覚えたら、使ってみたいと思う。

そんなふうにそれぞれに素直に良さを生かし、課題を克服していくことが勝利を呼び込んでいる。

試合後ミーティングを終えて、あのデジャヴのことを思い出した。
あのシーンは、去年同じ志村秋季で、この4年生達が3年生の時のDチームの決勝、追い上げようとするうちの攻撃の満塁のチャンスで、トモヤの痛打がファーストライナーになってゲッツー取られたあのシーンに似ていたんだと。
あの時はそれでチャンスをものにできずに負けた。
今日は逆に追い上げる相手の芽を摘んだ。
一年前のあの時、緊張して硬くなって思い通りできなかったこいつらが、逆にピンチを抑えられるようになった。

目標にしていた優勝まであと1つ。
次はどんなデジャヴが見れるんだろうか。
楽しみだ。

池谷