前向きニュース (2011年10月1日)


『負けて強くなる』

ベンチから試合を見ていると、後ろからの声援が、試合展開と試合の雰囲気で変わっていくのがわかる。

今日の試合は、イケイケからガンバレ、ヨシ!そしてガッカリ、ガンバレからまだイケる、声を出せ!から諦めるな!になり、やがて静かになって行った。

そんな試合だった。

3回を終わって8対2。
隣にあるスコアボードを眺めながら、負けてはいるけど、力はついて来たなと感じていた。

試合開始からまだ1時間経っていない。
これだけ点を取られている割にはテンポは悪くない。
以前ならここまでで10点差以上つけられてコールド負けしてもおかしくないくらいに相手はよく打つし、投手の球もいい。
でも、こんな点差で4回を迎えられる。
こちらはノーヒットであるが、ちゃんと試合になっている。

1回にいきなり1点を取られたが、追加点を許さなかった。
1アウトからのショート横への強い打球をショウが見事にさばいた。
うまくグローブに入ったようにも見えたが、捕る瞬間ちゃんと顔が打球を見ていた。
顔を上げてしまうクセがあったショウだが、随分とうまくなったもんだ。

その裏先頭のタイキが相手エラーで出た。
盗塁のサインに大きくリードをとっていたが、牽制で戻りきれずアウトに。
ベースの位置が少し動いていたことが災いしたように見えたが、仕方ない。アウトになったとはいえいいリードだった。
タイキは打撃に加え走塁もよくなって来た。次の打席で塁に出たときはちゃんと盗塁を決められた。

これでチャンスが途切れるところをケンタ、ショウ、クロギ、ユウト、タツマと連続四死球で押し出し2点。
以前なら高目に手を出してしまっていたやつらが揃いも揃ってよく球を見極められるようになった。

ここであと1本出れば違っていたかも知れないと思えるのも、力をつけてきた証拠だ。

2回に3点取られた。
最後センターフライをショウゴが捕って、飛び出したセカンドへ送球してダブルプレー。
この前までフライを捕っただけで舞い上がっていたショウゴが、こんなプレーもできるようになった。
嬉しそうに笑顔で戻って来るショウゴの顔を見たらこちらも嬉しくなって思わずハイタッチ。

次の回、ライトに上がったフライをクロギが捕ったのも当たり前に見えるようになった。
クロギには2試合4番を任せた。それを意気に感じてくれるのがいいところだ。

馴れないサードを守るユウトは、送球がよくなった。この試合ではエラーもあったが、ノックをしていて随分うまくなったと感じる。

タツマは今日は良くなかった。敗因の一つはここにある。
試合がうまくいかない時、バッテリーは怒られ役になることが多い。それだけ責任があるし、期待もある。
いままでのタツマは良ければ褒められるけど、悪くてもそんなには叱られなかったと思う。
でも今や叱られ役になるくらいチームの要になりつつある。

マサトは過去最高の投球数だった。
珍しく死球を2つ出すなど、よくはなかったが、結局四死球は3つ。
以前なら球数が50超えると乱れ出していたが、だいぶ体力もついてきた。

ケンスケのセカンドの動きもよくなった。
内野フライは安心して見ていられる。

ケンタは構えがよくなった。エラーもあって結果はイマイチだが、野球らしい動きができるようになってきた。

代打で出たタイセイは、いいスイングをするようになってきた。
以前なら点差がある時に経験のために代打で出したが、今日は本当に期待して代打として送った。

タカノは守備に信頼感が出てきた。
キャッチボールの球がとてもよくなった。重くて速い球が来る。
大きな身体をもっと活かせたら、ピッチャーもできるかも知れない。

ユウスケは張り切って1塁コーチをやっていた。
コールドスプレーを後ろポケットに携えることを覚え、クロギのデッドボールでそのスプレーを使えて得意顔だった。

シュウもだんだん役割がわかってきた。
自ら志願して3塁コーチもやった。

試合後子供達は、何ともいえない表情をしていた。
悔しいというでもなく、諦めたでもなく、何か感じたようだった。
クロギがそれを「力の差があった」と表現した。
正直なところだろう。
でも、それを感じるのはとても大事なことだ。
そのことを受け入れて、そしてこれからどうするか、コーチ達の話を聞きながら、きっと何か考えてくれたんじゃないかと思う。

負けて強くなる、そのことを子供達に伝えた。

小さい頃から見てきて、Dチーム、Cチームと監督をさせてもらったこの5年生のチームの采配を振るうのもこれで最後。
ヘタクソで、弱くて、なんとか試合になるくらいだったこいつらが、こうして負けても次を感じさせるくらいになったんだから、たいしたもんだ。

春は会長杯で優勝して、勝つことで強くなった。
今度は負けたことでまた強くなろう。

池谷